第3回研究会 議事録(2011年11月12日)

 

多賀 俊二 氏 / 全国NPOバンク連絡会事務局

「貸金業法改正とNPOバンクの今後の展望」

プレゼン項目

(1)NPOバンクとは何か

(2)貸金業法改正とNPOバンク

(3)改正貸金業法下におけるNPOバンクの貸金業法登録

(4)制度改善の状況と展望

(5)NPOバンクと市民金融の今後

 

研究会で示された多賀講師の見解

Q:NPOバンクのデフォルト率は?

A:年に数件あるかないか。設立以来デフォルトのないバンクもあり、正確なデータはないが、率にしたら1%以下といったところではないか。

 

Q:日本では、途上国でマイクロファイナンスを機能させているところの「コミュニティの連帯」が働きづらいのではないか。

A:確かにそういう側面はある。しかしNPOバンクと借り手とは、「信頼の年輪」の内側に入っていただくことで信頼関係を形成する。これを一種のテーマ型コミュニティと考えることも可能だろう。また、生活サポート基金などを見ると綿密な相談活動で借り手と信頼関係を形成するとともに融資に適した先を絞り込み、不良債権を抑えている。先進国には先進国のやり方があるということだろう。

 

Q:NPOバンクは融資が増えると不良債権が増えないか?

A:堅実に融資をしている限りそんなことはない。

 

Q:NPOバンクにはやはり限界はあるのでは?今よりちょっと大きくなる程度がせいぜいでは。

A:そんなことはない。アメリカのCDFI(コミュニティ開発金融機関)は2007年度で総資産160億ドルと1兆円を超えている。それを限界といえば限界なのかもしれないが、現在のNPOバンクの規模からすれば、事実上「無限の可能性がある」といってもよいのではないか。

 

Q:アメリカのCDFIはもっと高い金利を取っているのではないか。

A:確かにそのようだが、日本では、高収益が望みにくいソーシャルビジネスの借り手は「高金利を払うくらいなら借りるのをやめよう」となってしまうのではないか。新銀行東京などを見てもわかる通り、「ミドルリスク・ミドルリターン」は現実には難しい。

 

Q:東北でもNPOバンクのようなものがあれば衆目を集めると思うが、なぜ出資が集まらないのか。

A:個別のバンクの努力もあるが、やはりNPOバンクを重視する気運が必要だろう。

 

Q:しかし融資が3億円として金利2.5%として粗利益が750万円、先ほどの話で貸倒引当を1%相当(300万円)積めば450万円しか残らない。それで事務所費や通信費やいろいろ出しているのに食えるのか。また、そこまで行くのに、中心人物は無給に近い状態に何年耐えられるか。

A:だからこそ私は企業や行政と提携したソーシャルビジネス等の各種支援活動をもう一つの収入の軸として、「地域経済活性化センター」としての事業多角化を提案している。また、中心人物も融資で成功事例が多く出れば、「なんか書いてくれ」「話してくれ」といった相談・依頼も出てきて、「地域経済のプロ」たる社会起業家としての地位が確立するだろう。

 

Q:何年も講演と執筆だけで収入を得るのか。

A:そうではない。プロフェッショナルとして、NPOバンクの事業からだけではなく、収入源を多角化すべきということだ。中心人物が専門性を確立しなければ、行政や企業など様々な層との「連結ピン」にもなりえないし、専門家やボランティアを使いこなすこともできず、NPOバンクの経営自体おぼつかない。

 

Q:NPOバンクもこれからの成長のためには、法で許されている7.5%いっぱいまで金利を取り、投資家に配当することが必要だ。いわば、「営利と非営利の融合」だ。

A:余り成長ありき、配当ありきで考えないでいただきたい。一部には「配当できるから存在意義があり、広がりが生まれる」との観念もあるが、そうとばかりは言えないだろう。もちろん私も融資額の拡大(1件当たりのコストは融資額が100万円でも1,000万円でも大して変りない)など、経済性を考えないではないし、中心人物が生活できるNPOバンクが望ましいとは思う。しかし無理な融資をすればドイツのエコバンクのように破綻するリスクがあるし、草の根の互助組織として、ボランティア主体で運営する生き方も否定したくはない。

 

Q:NPOバンクにもそろそろ世代交代が必要なようだが、若い人をどうひきつけるのか。

A:若い人は卒業論文にNPOバンクを取り上げる例もあり、全国NPOバンク連絡会が主催する緩やかなイベントである「ソーシャルファイナンスカフェ・サロン」にも若くて能力のある人が数多く集まっている。こうした人々を応援団として組織化すれば、世代交代も難しくないだろう。

 

Q:NPOバンクは思ったより数は多くないという印象を持った。しかし単体ではなく、中間支援組織と組めば広がるのではないか。

A:同感である。私もNPOバンクの実務者と話すときに、「地域のソーシャルビジネスの状況をグリップしないとまずい」と言っているところであり、中間支援組織との連携はNPOバンクにとって必須だ。また、

 

Q:震災被災地のNPOが組んで連携復興センターができた。しかし金融に詳しい人はいない。

A:そうであれば、NPOバンクと地域の担い手との間で一緒に仕事ができる機会があれば面白い。

 

Q:私は金融機関で仕事をしているが、NPOバンクに参加しようとしても専門性が必要で入り込みにくいというのがある。融資に定量的な判断基準があればわかりやすいのではないか。

A:金融機関のビジネスローンとは違い、NPOバンクの場合は現状では他金融機関から借りられないところが融資の相談に来るので、数値基準では融資できないという結論になってしまう。またソーシャルビジネスでは外部のネットワークや主催者のリーダーシップなど、定性的な側面が数値的な弱さを補っているので、定量的な基準を作りにくい。もちろん融資審査を行う際の基本的な枠組みはあるが、それは定性的なものが中心で、審査委員が判断するための材料を集めることが必要だ。

 

Q:NPOバンクを全国的に設立するにはどうしたらいいか。興味がある人が出てくるのを待たなければならないか。

A:待ちの姿勢ではまずいだろう。2012年7月に開催される「第4回全国NPOバンクフォーラム」など、あらゆる機会を利用したい。またバンク連のWebサイトに「NPOバンクを作りたい人、話をしに行きますよ」と書くだけでも変わってくるだろう。

 

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